沼津信用金庫が 「イスラム」口座拒否

ほとぼりが冷めてきたので、取り上げてみます。

 沼津信用金庫が、任意団体「日本イスラーム圏友好協会」名義で沼津信用金庫(本店・静岡県沼津市)に口座を開設しようとしたところ、団体名に「イスラム」が含まれることを理由に断った件について

 最初に感じたのは、同じ静岡県人として、また、県東部を代表する沼津市の地元企業として「恥ずかしい」ってことでした。
 テロ行為を行う団体がイスラムを名乗っていることによる本来のイスラムの人たちへの濡れ衣のような偏見が広がりつつあるようなこの時に、イスラムの名前を含んだ団体の口座開設をその名前ゆえに門前払いを食わせるなんて、汚い表現だけど「糞も味噌もわからない」無教養ぶりを表しているようで、悲しかった。

 あの「オウム真理教」のサリン事件の時、「オーム社」っていう電気・科学関係の良書、技術書を出版している出版社が、「オウム真理教」との関係を疑われたっていう、冗談とも本気ともわからない記事があったことを思い出しました。
 沼津には、沼津東高という県下きっての進学校もあり、良識のある文化・教養に親しんだ人たちがたくさんいるだろうに、こんな、反射的な対応しかとれなかったんだろうか。まして、沼津信用金庫の本部もかかわっているというのに…
 
 当事者の斉藤さんの沼津信用金庫とのやり取りや朝日新聞の報道後の沼津信用金庫のホームページでの釈明が、ネット上に掲載されてる。
 読んでみると日本の地域社会のありようが見えてくる。
 
 
朝日新聞 2015年3月1日

団体名に「イスラム」、口座開けず 沼津信金が拒否

 静岡県御殿場市の男性が、自ら立ち上げた任意団体「日本イスラーム圏友好協会」名義で沼津信用金庫(本店・静岡県沼津市)に口座を開設しようとしたところ、団体名に「イスラム」が含まれることを理由に断られた。男性は「『イスラムは怖い』という偏見そのもの」と話している。

 男性は斉藤力二朗さん(66)。エジプトのカイロ大卒で、中東系銀行の日本勤務のほか、日本の大学でアラビア語講師などを務めた。その後、10年前からイスラム圏の政治情勢や事件などについて、自らのブログなどに書いてきた。

 過激派組織「イスラム国」(IS)が日本人を殺害したとみられる事件が起き、その影響で「イスラムは怖い」という偏見が日本に広がっていると感じた。「正しい情報を発信したい」と1月に協会を設立。メールマガジン発行や講演会開催といった活動を始めるにあたり、資金管理用の口座を作ろうと、2月24日に沼津信金上町支店(御殿場市)に電話で相談すると、職員から「イスラムという名前が入った団体では口座は開けない」と言われたという。

 支店長は朝日新聞の取材に「過剰だと思われるかもしれないが、(ISの事件で)イスラムに対する悪いイメージもあり、慎重にならざるをえなかった」と説明。支店の判断は沼津信金本部も了承したという。

 本部経営企画部リスク統括課長は取材に「将来、イスラムの教えから逸脱した組織などに、口座から資金が流れる疑義がまったくないとは言えないことなどを総合的に判断した」と答えた。

 現代イスラム地域研究などが専門の内藤正典同志社大大学院教授は「イスラムを『イスラム国』に結びつけてしまう間違いの典型だ。イスラム教徒は侮辱されたと思うだろう。日本ではイスラムについての知識が乏しい」と話している。
 以上
http://digital.asahi.com/articles/ASH2V64S9H2VUTPB01Q.html
 
 
日刊ベリタ 2015年03月08日09時56分掲載

沼津信用金庫朝日新聞報道を換骨奪胎 「イスラム」口座拒否

 団体名に「イスラム」のある口座の開設を沼津信用金庫が拒否したという、3月1日の朝日新聞朝刊の報道を受け、各紙が一斉に後追い報道をしたが、反響の大きさに危惧を抱いたのか、沼津信金は一転、朝日に話した内容の主要部分を完全に否定している。事件が起きた2月24日の経緯を述べるとともに、他紙の記事やブログなどでの事件へのコメントを紹介する。
(齊藤力二朗)

 24日の午前中に斉藤(口座開設申請者)が、任意団体の口座開設申請するに当たって必要な書類や手続きを尋ねるため、沼津信用金庫の上町(かみまち)支店に電話する。対応した職員の米山氏は、斉藤にまず4点を尋ねた。
1、任意団体の代表者である申請者の名前
2.任意団体の名称  
3.任意団体の住所   
4.任意団体の電話番号
 ほかには、団体の代表者と役員とで団体の規約を持参して支店に来てほしいといわれたので、無論応諾する。しかし、団体名を聞いた米山氏が一旦電話を切って掛け直すというので、数分待つと、かけ直された。

 そこで「最近問題になっているイスラムという一語が団体名にあるので口座の開設はできない」と拒否された。そこで、ほかの名称の団体なら開設できるかと問うと、たとえばどんな名前かと訊くので、たとえば「キリスト教だ」と答えると、返答できず。

「宗教名を理由に断ることは、宗教的偏見に基づく差別になる。このことを公表しても構わないか?」 と尋ねると、再度かけ直すからと電話を切った。10分以上して米山氏からの二度目の電話が入り、「イスラムの一語やその他総合的に判断して開設はできない。このことを公表されるのも仕方がない」というので、話し合いはそこで決裂、電話は切られた。両者の会話は電話のみの会話なので沼信側は団体の規約も目的なども何も見ていない。わずか4項目の情報で何が総合的に判断できたのだろうか?

それでは、3月1日以降に他紙に掲載された沼信の釈明に対する斉藤の反論を述べる。

【沼信】同信金は、電話のやりとりだけで口座を開くことはなく、任意団体の口座開設は慎重にしているという 『斉藤』 電話のやり取りだけで開設できるとは誰も思っていない。しかし、申請希望者が支店に行く機会も与えられず、団体名を告げたらそれを理由に拒否された。沼信側は巧みに論点を外そうとしている。

【沼信】2月上旬には職員に「イスラム国とイスラム社会を分けて考え、誤解を招く発言は避ける」旨の文書を通知していた。
『斉藤』そのような通知がされていたのなら、なぜ窓口の職員があのような対応をしたのであろうか。苦し紛れの言い逃れとも理解されるが。

【沼信】担当者は「電話のやり取りだけでは目的などをくみ取ることができなかった」とし、「(団体の)詳細が不明な中で口座が不正利用される疑念が払拭(ふっしょく)できなかった」などと話している。
『斉藤』電話では4項目しか尋ねられていないのだから、目的や団体の詳細などを汲み取れるわけがない。沼信の職員は超能力者なのだろうか。
 (引用者注:ここまでは、静岡新聞へ沼津信金のコメント)
  http://www.at-s.com/news/detail/1174173003.html

【沼信】団体名に『イスラーム』が含まれていたことが拒否の理由ではなく、対応に問題はなかったと考えている。
 (引用者注:これは、産経新聞への沼津信金のコメント)
  http://www.sankei.com/life/news/150302/lif1503020042-n1.html
『斉藤』支店窓口の米山氏が、最近、問題が多いイスラムという一語が団体名に含まれている、と明言している。このことは、全国信用金庫協会や沼信に問い合わされた御殿場市役所消費生活センターの森脇氏が沼信支店の職員、田代氏に確認している。
 以上
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201503080956360

沼津信用金庫 平成27年3月2日

昨日からの報道について

 平素は、格別のご愛顧を賜り厚く御礼を申し上げます。
 今般、当金庫の支店において、お客様からお電話で、「イスラム」の名称の入った任意団体の口座開設のお問い合わせがあり、開設をお断りした事案がございました。
 当金庫では、任意団体の口座開設においては、日頃より、規約の有無・口座開設の目的・構成員・活動状況などの要件確認を十分に行わせていただいております。今回の件におきましては、電話における当金庫とまったく取引のないお客様からのお申し込みであったこと、また、その電話でのやり取りにおいて、お客様の口座開設の目的を十分に把握できなかったことから、当金庫として総合的に判断し、口座の開設をお断りした次第でございます。
 報道におきましては、団体名に「イスラム」が含まれていることを理由に口座開設を拒否とされておりますが、決してそのような理由でお断りしたものではございません。
今後、お客様の口座開設のお申し出に際しましては、口座開設の目的などを今まで以上に丁寧に確認を行うなど、十分な配慮をしたお取り扱いをさせていただきます。
以上
http://www.numashin.co.jp/news/files/news_release_2015_01.pdf