箱根山の噴火警戒レベル2に引き上げ

気象庁は、平成27年5月6日6時に、箱根山の噴火警戒レベルを2に引き上げました。


クリックしてオリジナルサイズで見てください。気象庁(平成21年3月運用)から作成 
http://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/STOCK/level/Hakoneyama.pdf

平成27年5月6日午前6時10分に箱根町が発表した立ち入り規制は、事前の防災計画どおりの上の地図に示された範囲内のものになっています。
(補足:箱根ロープウェイは、全線運休になっています。)

 報道やネットの書き込みが過熱する(自分もその一人だけど・・・)と思いますが、押さえておかなくてはいけないのは、今すぐに溶岩を噴き出して噴火するという状況ではない、ということ。
 水蒸気爆発は、可能性として高まっているので、その対応をしましょうという段階だと思います。
傾斜計(マグマの上昇によって起きる山体の膨張をとらえる装置)の大きな変化や火山性微動(上昇してきたマグマが地下でゆらゆら動く)は、観測されていません。

噴火が差し迫っているとか、住んでる人が巻き込まれそうで心配(心配にもいろいろあって、心労が心配と危険が迫っているので心配は、とても違います。)というコメントが、広がるのは、逆に箱根の人たちを不安にし、日常生活に支障を与えることになると思います。
 現在は、
火口周辺に影響を及ぼす(この範囲に入った場合には生命に危険が及ぶ)噴火が発生、あるいは発生すると予想される。

箱根町で生活する住民は、通常の生活をしていて問題ない。

過去事例でいくと、
2001年6〜10月:地震活動の活発化、山体の膨張を示す地殻変動、噴気異常等の熱活動の活発化 の段階です。


箱根町周辺の火山・地震活動 (箱根町HPから)
   http://www.town.hakone.kanagawa.jp/hakone_j/ka/soumu/saigai02.html
 平成27年5月6日午前6時より、気象庁箱根山に対し、噴火警戒レベル2(火口周辺規制)への引き上げられました。

[:W450:left]  これに伴い箱根町は、同日午前6時10分に大涌谷周辺の皆様に対し、避難指示を発令し、
 今後、火山活動の活発化が予想されるため、火口周辺の立ち入りを禁止しています。

 平成27年5月6日午前6時30分から、次の措置をとることにしました。
 1 県道734号線、735号線の大涌谷三差路から大涌谷方面への通行禁止
 2 箱根ロープウェイの全線運休
 3 姥子〜大涌谷間の自然探勝歩道の閉鎖
 
 平成27年5月4日午前5時から、次の措置をとることにしました。
 1 大涌谷自然研究路の閉鎖 
 2 ハイキングコースの一部区間の閉鎖  

火山名 箱根山 噴火警報(火口周辺) 気象庁地震火山部 (一部要約)
  http://www.jma.go.jp/jp/volcano/forecast_03_20150506060003.html
箱根山に火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)を発表>
火口周辺に影響を及ぼす噴火の可能性。
<噴火警戒レベルを1(平常)から2(火口周辺規制)に引上げ>

1.火山活動の状況及び予報警報事項
 箱根山では、4月26日から大涌谷付近を震源とする火山性地震が増加し
ており、5月5日には箱根湯本で震度1を観測する地震が3回発生しました。
 傾斜計では、地震活動に関連するとみられるわずかな変動が観測されてい
ます。
 気象庁が実施した現地調査では、大涌谷温泉施設で蒸気が勢いよく噴出し
ているのを確認しています。
 
 これらのことから、箱根山では火山活動が更に高まっていると考えられ、
今後、大涌谷周辺に影響を及ぼす小規模な噴火が発生する可能性があります。

2.対象市町村等
 以下の市町村では、火口周辺で入山規制などの警戒をしてください。
神奈川県:箱根町

3.防災上の警戒事項等
 大涌谷周辺では小規模な噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石に警
戒してください。
 風下側では火山灰や小さな噴石が風に流されて降るおそれがあるため注意
してください。
 地元自治体等の指示に従って危険な地域には立ち入らないでください。

<噴火警戒レベルを1(平常:状況に応じて火口内への立入規制等)から
レベル2(火口周辺規制:火口周辺への立入規制等)に引上げ>



《付け足し》

気象庁の使用している『噴火』が、分かりやすさを第一にしているため、水蒸気爆発と噴火がごちゃ混ぜになってしまっている、と感じます。
火山が、大音響ととともに噴煙をモクモクあげれば、一般の人の感覚からすれば、当然、『噴火』だけど、
マグマの上昇による「噴火」と地下水が大規模に沸騰して岩石や山体を吹き飛ばす「水蒸気爆発」とは、地学的に異なるものであることは、しっかり説明するべきじゃないだろうか。
(もちろん、水蒸気爆発だからといって、小規模な災害で終わるとは限らないけれど)

 昨年の御岳山の「噴火」は、水蒸気爆発で、爆発の直接の原因となった高温の水が爆発によって吐き出されてしまうと「噴火」は終息していきます。
一方、1983年(昭和58年)の 三宅島 雄山、1986年(昭和61年)の伊豆大島 三原山の噴火のように、マグマの上昇の結果起こったものは、長期間にわたって、災害を引き起こします。

いま、箱根で警戒しているのは、「水蒸気爆発」という、「噴火」のかたちであることを、防災のためにもこの機会にしっかり説明することが大事でないでしょうか。

特に、報道機関の方々、きちんと新聞を読んでいれば、専門家ではない私くらいの知識は、当然、身についているはず。
知識不足を省みず、気象庁を責めるように、質問することが記者の責務ではない。

必要な知識と情報について、整理しながら報道してほしいと思います。


火山学者の早川由紀夫群馬大学教育学部教授)さんの Twitterから
https://twitter.com/HayakawaYukio/status/595130991838142464

水蒸気噴火:水蒸気だけの噴出(おかしい。それは噴火とは言わないはずだ。
水蒸気爆発:水蒸気が周りの岩石を吹き飛ばす

これが私の語感だ。従来の日本火山学の用語体系だ。
水蒸気噴火の語を持ち込んでこれを気象庁がめちゃくちゃにした。
いま、箱根山の火山リスクの記述で困難が生じている。

高校時代、地学部だった私でも、まったく同感です。

《付け足し 2》
火山性地震について
私だけの感じ方かもしれないが、「火山性地震が、発生している。」と報道するとき、
「火山が噴火しそうなので、発生している地震
または、「火山の噴火と関連している地震」のようなとらえ方で、使われている気がします。

火山性地震」は、地震の発生原因の区分によるもので、直接には、噴火とは関係がありません。
火山の周辺で、マグマやその影響下にある高温体、火山という特殊な地質によって発生する地震を総称して「火山性地震」と呼んでいるのです。

ここらの呼び方の印象からくる誤解をしっかり説明しておくことも大切だと思います。
火山で地震が起きることは、プレート境界に位置する日本で地震が起きることと同じことです。

地震のない国から来た人は、地震を体験するとこの世の終わりに思うかもしれません。
でも、地震国の日本では、よくあることです。
火山で地震のあることも、同じだと思います。火山であるからには、避けられないことです。

火山の近くで火山性じゃない地震が発生したら、その方が大変なことになんるんじゃないでしょうか。
(うまく、まとまらなかった・・・)