子ザルにシャーロット

大分市高崎山自然動物園がサルの赤ちゃんに「シャーロット」と命名し、批判が殺到した問題

 結局、英王室広報が7日、日本の報道陣の取材に対し「どんな名前をつけようと、動物園の自由」と答えたということで、撤回はなくなった。

 この問題、日本人の「御上」に対する意識、「不敬」について考えさせられる。
朝日の識者のコメントでは、納得できないところがあり、あれこれ考えてみたい。


子ザルに「シャーロット」、決着の経緯は… 海外も注目
    朝日新聞 2015年5月9日05時05分
http://digital.asahi.com/articles/ASH584T82H58TIPE01M.html?iref=comtop_6_05
 大分市高崎山自然動物園がサルの赤ちゃんに英王室の王女と同じ「シャーロット」と名前をつけて批判が殺到した問題は、同市が8日、名前を変更しないと発表し、決着した。海外でも報じられたこの騒動は、いったい何だったのか。

 大分市吉田茂樹・商工農政部長は8日午後の記者会見で「(名前を)応募してくれた方々のお祝いの気持ちを尊重した」と説明。高崎山管理公社の幸信介事務局長は、英王室広報が7日、日本の報道陣の取材に対し「どんな名前をつけようと、動物園の自由」と答えたことに触れ、「王室の気持ち、感じ方を受け止めた」と話した。

 市や公社によると、「シャーロット」と名付けたのは、名前の公募に対して最も多く寄せられたからだった。だが、命名のニュースが流れた6日午後以降、「英国王室に失礼」といった批判が園に殺到。午後10時ごろまで職員が対応に追われた。「なぜ騒動になりそうだとわからずに付けたのか」「英国との関係が悪くなったらどうするのか」という意見もあったという。

 園は同日午後10時ごろ、「多大なるご迷惑をおかけしたことを深くおわび申し上げます」とホームページに掲載。だが、これを英国のBBC放送やガーディアン紙などが報じ、世界中で話題になった。大分市は7日、シャーロットとの命名について、「撤回も含めて検討する」としていた。

 この騒動、英国ではどう受け止められたのか。

 BBCの女性キャスターは「動物園側が謝罪を強いられた」と伝え、ガーディアン紙は「英王室はその親しみやすさから日本で非常に人気がある」と背景を説明した。同紙ウェブサイトのコメント欄には、「王女の名前でなくてもすてきな名前だから撤回すべきでない」「英国人は誰も気にしていない」などと動物園を擁護する声が目立った。

 動物観や動物の名付けに詳しい、千葉市動物公園の石田戢(おさむ)園長(68)によると、日本の動物園にいる動物の名前の約3分の1は人名で、珍しいことではないという。とはいえ、皇室や王室が絡むと反発が出ることが予想されるため、「あまりしない」と話す。

 一方、英国文化に詳しい北九州市立大の高山智樹・准教授(文化研究)は「英国では王室に対するタブーはない。サルに王族の名前を付けてもユーモアになるだろう」と話す。ウィリアム王子一家が2014年にオーストラリア・シドニーのタロンガ動物園を訪問した際には、王子の息子と同じ「ジョージ」と名付けられた有袋類の動物と笑顔で対面する様子が報じられた。動物園の広報担当者は「国から王室への贈り物だった。問題になることなどなかった」と振り返る。

 今回の騒動について、文化人類学が専門の近藤直也・九州工業大教授は「人々の深層にある獣に対する差別意識が表れた」と話す。さらに、「一部の人たちが英王室の王女の名前に日本の皇室を重ね、敏感に反応したのだろう」とみる。

 一方、騒動を招いたのは、批判を受けてすぐに謝罪し、命名の撤回まで口にするなどして揺れた大分市側にあるとの声も。公社の幸事務局長は会見で「利用客への電話対応もできない状態が続いていた」と説明し、園の関係者は「苦情を言ってきた人を想定し、謝罪をしないといけないと思った」と明かす。市と園に電話やメールで寄せられた意見は8日までに計1597件。ただ、6日こそ批判が大半を占めたが、7日以降は「英国と大分がつながる。夢があっていい」など、肯定的な意見も徐々に増え、最終的に批判969件、肯定600件となっていた。

 上智大の田島泰彦教授(メディア論)は、今回のケースが誰かを傷つけたり、権利を侵害したりしていないとして「名付けは親しみがわく話。決定した動物園側はむしろ市民感覚があった。それなのに批判に過剰に反応し、右往左往した末に、王室のお墨付きを得て判断したようにみえる」と話した。