口永良部島 噴火 前兆とらえられず

口永良部島(鹿児島県屋久島町)では、本日(29日)09時59分に新岳で爆発的噴火が発生し、火砕流が新岳の南西側から北西側(向江浜地区)にかけての海岸まで達しました。噴煙は火口縁上9000メートル以上まで上がり、火口周辺に噴石が飛散しました。

 気象庁は、今回の噴火にマグマが作用しているとしていますが、マグマの動きをとらえることはできず、事前の警戒情報は、出せませんでした。
 水蒸気爆発(噴火)だけでなく、現状では、マグマ噴火でも、噴火の兆候を捕えることは、難しい火山が多いということだと思います。
 気象庁など関係の機関の直近のレポートをいくつか引用してみますが、中期的な危険性には、言及しているものの、その状態が続くことで、逆に、噴火の切迫性を薄めてしまっている。 なので、今回の噴火でも、住民の多くは、取るものもとりあえず、避難するしかなかった。(北西部の避難場所に集まれたのは、昨年の噴火の教訓が生きていた結果だと思います。)


 傾斜計での明瞭な変化は、見えません。
5月29日に発生した口永良部島の爆発的噴火について 気象庁 報道発表資料
http://www.jma.go.jp/jma/press/1505/29a/150529kuchinoerabu.pdf

口永良部島の火山活動解説資料   平成27 年5月29 日21 時50 分発表
福岡管区気象台 火山監視・情報センター 鹿児島地方気象台

http://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/STOCK/monthly_v-act_doc/fukuoka/15m05/20150529_509_2.pdf
<噴火警戒レベル3(入山規制)を噴火警戒レベル5(避難)に引上げました>
口永良部島で、本日(29 日)09 時59 分に爆発的噴火が発生しました。この噴火に伴い発生した
火砕流が、新岳の南西側から北西側(向江浜地区)にかけて流下し、北西側では海岸まで達し
たのを本村西の遠望カメラで確認しました。噴煙は黒灰色で、火口縁上9,000m以上に上がりまし
た。また、火口周辺に噴石が飛散しているのを確認しました。噴火は現在も継続しており、噴煙が
火口縁上1,200mまで上がっています。
本日(29 日)、気象庁機動調査班(JMA-MOT)は国土交通省九州地方整備局の協力を得て、口永
良部島上空からの観測を実施しました。その結果、火砕流は新岳火口からほぼ全方位に流れており、
特に北西方向ではっきりと確認
できました。また、火口の東側で火山灰を確認しました。
今後も、爆発力が強い噴火や規模の大きな噴火が発生する可能性があります。
火砕流の到達が予想される屋久島町口永良部島の居住地域では、厳重な警戒(避難などの対応)
をしてください。


火山名 口永良部島 火山の状況に関する解説情報 第43号
平成27年5月25日16時00分 福岡管区気象台・鹿児島地方気象台

**(本 文)**
<火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)が継続>

1.火山活動の状況
(5月22日から25日15時)
 口永良部島の火山活動は活発な状態が継続しています。

 23日08時00分に発生した口永良部島付近を震源とするマグニチュー
ド2.3(暫定値)の地震(深さはごく浅い)では、口永良部島で震度3を
観測しました。
これ以降に震度1以上を観測する地震は発生していません。
震度1以上を観測したのは2015年1月24日以来です。

 噴火は発生しませんでしたが、新岳火口からの噴煙量は2014年8月3
日の噴火前に比べて多い状態が継続しており、白色の噴煙が最高で火口縁上
500mまで上がりました。また、同火口では、夜間に高感度カメラで火映
を時々観測しました。

 火山性地震を29回観測しました。火山性微動は観測されませんでした。

 GNSS連続観測では、2014年12月頃から山麓の観測点による基線
の一部で認められたわずかな伸びの傾向は2月頃から鈍化しています。

 22日から25日に気象庁機動調査班(JMA-MOT)が実施した現地
調査では、新岳火口からの活発な噴煙や同火口の西側割れ目付近からの噴気
を引き続き確認しました。新岳火口西側部分の熱異常域は引き続き認められ
ました。風下側で明らかに感じる臭気が認められました。

 20日(期間外)と24日に東京大学大学院理学系研究科、京都大学防災
研究所及び屋久島町が実施した観測では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり
500トンから1000トン(前回17日1200トン)とやや多い状態で
した。

 以上のように火山活動の高まりがみられており、今後、爆発力が強い噴火
や規模の大きな噴火に移行する可能性があります。

 5月22日からの火山性地震火山性微動の回数(速報値)は以下のとお
りです。

               火山性地震    火山性微動
   5月22日          1回       0回
   5月23日         14回       0回
   5月24日         13回       0回
   5月25日(15時まで)   1回       0回



平成27年 No.22 週間火山概況(平成27 年5月22 日〜5月28 日)
口永良部島くちのえらぶじま [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

口永良部島の火山活動は活発な状態が継続しています。
白色の噴煙が最高で火口縁上800mまで上がりました。噴火は発生しませんでしたが、新岳火口からの
噴煙量は2014 年8月3日の噴火前に比べて多い状態が継続しています。また、同火口では夜間に高感度
カメラで火映9)を時々観測しました。火山性地震は多い状態で経過しました。このうち23 日08 時00 分
には島内を震源とするマグニチュード2.3(暫定値)の地震が発生し、屋久島町口永良部島公民館で震度3
を観測しました。震度1以上を観測したのは2015 年1月24 日以来です。これ以降に震度1以上を観測す
地震は発生していません。火山性微動は観測されませんでした。

GNSS3)連続観測では、2014 年12 月頃から山麓の観測点による基線の一部で認められたわずかな伸びの
傾向は、2月頃から鈍化しています。
22 日から27 日に気象庁機動調査班(JMA-MOT)が実施した現地調査では、新岳火口からの活発な噴煙や、
同火口の西側割れ目付近からの噴気を引き続き確認しました。新岳火口西側部分の熱異常域は引き続き認
められました。
24 日、26 日、27 日に東京大学大学院理学系研究科、京都大学防災研究所及び屋久島町が実施した観測
では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり300〜500 トン(前回21 日700 トン)とやや多い状態でした。
火山活動は活発な活動が続いており、2014 年8月3日と同程度の噴火が発生する可能性があります。今
後、爆発力が強い噴火や規模の大きな噴火に移行する可能性もありますので、火山活動の推移を引き続き
注意深く見守る必要があります。
新岳火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石1)に警戒してください。
向江浜地区から新岳の南西にかけて、火口から海岸までの範囲では火砕流に警戒してください。風下側で
は火山灰だけでなく小さな噴石1)が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。


平成27年 No.21 週間火山概況 (平成27年5月15日〜5月21日)
口永良部島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 口永良部島の火山活動は活発な状態が継続しています。
 噴火は発生しませんでしたが、白色の噴煙が最高で火口縁上600mまで上がりました。新岳火口からの噴煙量は2014 年8月3日の噴火前に比べて多い状態が継続しています。また、同火口では17日から21日にかけて、夜間に高感度カメラで火映9)を観測しました。
 火山性地震が時々発生しています。火山性微動は観測されていません。
 GNSS3)連続観測では、2014年12月頃から山麓の観測点による基線の一部で認められたわずかな伸びの傾向は、2月頃から鈍化しています。
 15日から21日に気象庁機動調査班(JMA-MOT)が実施した現地調査では、新岳火口からの活発な噴煙や、同火口の西側割れ目付近からの噴気を引き続き確認しました。新岳火口西側部分の熱異常域は引き続き認められました。風下側で明らかに感じる臭気が認められました。17日、21日の二酸化硫黄の放出量は1日あたり1,200トン、700トン(前回14日700トン)と概ね多い状態でした。
 噴煙活動等は継続しており、今後も2014年8月3日と同程度の噴火が発生する可能性があります。
 また、火山ガス観測や地殻変動観測によると、今後、爆発力が強い噴火や規模の大きな噴火に移行する可能性もありますので、火山活動の推移を引き続き注意深く見守る必要があります。
 新岳火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石1)に警戒してください。向江浜地区から新岳の南西にかけて、火口から海岸までの範囲では火砕流に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石1)が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。降雨時には土石流の可能性があるため注意してください。


全国月間火山概況(平成27年4月)

口永良部島では、噴火は発生しませんでしたが、火山性地震が時々発生し、火山ガスの放出量は多い状態で経過しています。また、夜間に高感度カメラで火映を時々観測したほか、現地調査では、新岳火口の西側割れ目付近の熱異常域内で温度の上昇が認められています。 以上のように火山活動の高まりがみられており、今後、爆発力が強い噴火や規模の大きな噴火に移行する可能性があります。新岳火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石に警戒してください。向江浜地区から新岳の南西にかけて、火口から海岸までの範囲では火砕流に警戒してください。

第131 回火山噴火予知連絡会 気象庁
口永良部島 (2015 年2月10 日現在)
○ 概況(2014 年10 月〜2015 年1月31 日)

口永良部島の新岳では、2014 年8月3日に噴火が発生して以降、噴火の発生はない。この噴
火以降、噴煙量がやや増加した。白色の噴煙が概ね100〜200mまで上がり、最高は火口縁上800
mであった。
10 月7日、8日に実施した現地調査で、新岳火口および西側割れ目付近で噴煙が上がってい
るのを確認した他、新たに新岳の南西斜面で噴気が上がっているのを確認した。赤外熱映像装
置による観測では、引き続き新岳火口縁の西側および西側の割れ目付近で熱異常域を確認した
ほか、南西斜面の新たな噴気地帯も熱異常域となっているのを確認した。11 月14〜15 日、12
月14 日、1月13〜16 日に実施した現地調査でも、同様の観測結果であった。
12 月18 日に海上自衛隊第72 航空隊鹿屋航空分遣隊の協力を得て実施した上空からの調査で
は、新岳火口では白色の噴煙が火口縁上50mまで上がっており、新岳火口の西側割れ目付近及
び南西斜面で噴気を確認した。また、赤外熱映像装置による観測では、新岳火口の西側から南
西側にかけての熱異常域の分布に特段の変化は認められなかった。
口永良部島では2014 年8月3日に噴火が発生して以降、噴火の発生はない。2015 年1月24
日に火山性地震が一時的に増加した。同日、23 時14 分に発生した、口永良部島付近を震源とす
マグニチュード2.2(暫定値)の地震(深さ5km)では、屋久島町口永良部島池田で震度1を
観測した。

二酸化硫黄の放出量は、2014 年10 月から11 月に1日あたり500 から700 トンと増加した。
その後さらに増加し、12 月に1日あたり1,000 から1,900 トン、2015 年1月に1,100 から3,100
トンと多い状態となっている。
GNSS 連続観測では、2014 年12 月頃から一部の基線にわずかな伸びの傾向が認められる。
新岳火口から概ね2km の範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石に警戒が必
要である。
向江浜地区から新岳の南西にかけて、火口から海岸までの範囲では火砕流に警戒が必要であ
る。
風下側では降灰及び風の影響を受ける小さな噴石に注意が必要である。降雨時には土石流の可
能性があるので注意が必要である。
平成26 年8月7日に噴火警戒レベル3(入山規制)を切替えた。その後、警報事項に変更は
ない。


口永良部島くちのえらぶじま Kuchinoerabujima(鹿児島県)【常時観測火山】
北緯30°26′36″ 東経130°13′02″ 標高657m (古岳)(標高点) 口永良部島地図
http://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/fukuoka/509_Kuchierabujima/509_index.html
口永良部島全景 東側から 1996年7月23日 気象庁撮影

概要
 長径(西北西〜東南東)12km、最大幅5kmのひょうたん形の島。 古い火山体である西部の番屋ヶ峰と現在まで活動を続けている島の中央部から東部を構成する新岳・古岳・野池山などの火山体からなる。 最近の10,000年間の噴火は古岳・新岳・鉢窪火山で発生している。
 古岳南西〜南東山麓には複数の安山岩質溶岩流が確認でき、7,300年前より新しいと考えられる。 この溶岩流を覆う火砕流堆積物は、古岳山頂火口を囲む火砕丘に連続しており、小林・他(2002)では、この堆積物中の木炭から約200年前の放射年代測定値を得ている。 このことから、古岳火口では数百年前まで火砕流を伴う噴火が発生していたと考えられる。
 新岳は古岳の北西に開いた崩壊地形内に成長し、新岳山頂部を構成する火砕丘は火山角礫層からなり、火山弾や冷却節理を持つ岩塊を多く含む。 また、複数火山灰層を確認できることから、古岳あるいは新岳で過去1,000年以内に複数回の爆発的なマグマ噴火があったと考えられる。安山岩のSiO2量は54.5〜60.5 wt.% である。

噴火活動史
 各火山について、地質学的な研究によってわかっている過去1万年の火山活動史を記載した。また、過去1万年間の噴火活動と有史以降の火山活動とに分けて記載した。

過去1万年間の噴火活動
 最近10,000年間の活動は、古岳・新岳・鉢窪火山で発生している。古岳火山南西〜南東山麓には複数の安山岩質溶岩流が発達する。 表層に分布する溶岩流の上面には鬼界アカホヤ火山灰層が認められないことから、現在の表層に分布する溶岩流は7,300年前より新しいと考えられる。
新岳火山から流出する新岳溶岩はその古地磁気解析から11世紀あるいは9世紀に噴出したと考えられている。


口永良部島ポータルサイト
http://kuchi-erabu.org/funka.html
噴火の歴史や昨年8月の噴火の体験なども紹介されています。